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会長からの挨拶

 

会長 寺島 吉彦(国際基督教大学)

 

 2000年に当時の文部省から発行された報告書である廣中レポートでは、学生相談は学生の人間形成を促すものとして大学教育の一環として位置づける必要がある、とされました。もう四半世紀以上も前になるのですね。各大学でこの考え方がどの程度定着しているかはこころもとない面もありますが、「教育」を「成長促進的な関わり」と考えると「学生相談・カウンセリング」と「教育」はとても親和性があるように思います。カウンセリング理論や技法には様々なものがありますが、程度の差こそあれ本人が持っている力を引き出そうとする要素(成長促進的要素)は必ず含まれているのではないでしょうか?


 若者を取り巻く環境に成長促進的な要素が充分に含まれているか、と考えるとはなはだ疑問です。昔の環境が良かったなどというつもりはありませんが、インターネットやAI の急速な普及により、自分の生活を振り返ってみても「待たないで済む・考えないで済む」一見楽な生活がどんどん広がっているように感じます。心の成長・人間的成長を筋肉の発達になぞらえるのは乱暴かもしれませんが、筋肉痛が栄養補給と休息を経て筋力アップにつながるように、適度な負荷は人としての成長に不可欠なのではないでしょうか?心理的に過剰な負荷を避けつつ、必要な負荷は引き受け、栄養補給と休息を適切にとるのは難しいことかもしれません。自分が過剰な負荷にさらされているという自覚が持てないまま打ちひしがれている学生も散見されますし、あまりにもしんどい思いをした反動なのか(それはそれでとても辛いことですが)負荷から完全に距離を置こうとしてしまっている学生も見られます。そのような学生に自分をとらえ直す別の視点を持てるように援助できるのはカウンセラーの強みです。また、葛藤を抱えて奮闘している学生を見て<しんどい中で打ちひしがれそうになりながらも頑張ろうとしているんだよね>という理解を伝えることは、学生の心理的な栄養補給と休息につながるはずです。

 社会そして高等教育機関の中で、学生に過剰なストレスを避けさせ、でも必要なストレスに立ち向かうように背中を押すという細やかな対応はなかなか行き届かないのが現状かと思います。ましてや適切な理解という栄養や休んでもいいという安心感(これも適切に理解してもらっているという感覚に裏打ちされているはずです)を与えることは難しいと言わざるを得ません。学生相談機関でカウンセラーとして働く我々の「教育」に携わるものとしての存在意義はここにあるはずです。高等教育機関を取り巻く環境は厳しくなるばかりですが、そのような中でもやりがいと誇りをもって業務に取り組んでいきたいものです。

 

2026年4月13日